スワップポイントの受払は対称ではない。日数も金額も毎日変わる|2026年9月版
スワップポイントを「持っているだけで毎日入る小遣い」だと思っているうちは、まだ甘い。受け取る側と払う側で額が違い、日数は0にも4にもなり、符号すら反転する。

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高金利通貨を買って寝かせておけば、毎日いくらか入ってくる。その一点だけを見て建玉を積み、三か月後に口座を見て首をかしげる者がいる。想定より少ない、あるいは減っている。
結論を先に置く。スワップポイントは金利差の日割りだが、受け取る額と払う額が同じとは限らず、日数も毎日一定ではない。ズレは三つある。受払のズレ、日数のズレ、符号のズレだ。この記事では、東京金融取引所が公表している2026年8月から9月の実数で、その三つを順に叩き込む。
まずは定義から。金利差を日割りしたものだ
スワップポイントとは、二つの通貨の金利差に相当する金額を日割りしたものである。東京金融取引所は、買いと売りの両方について、次のように説明している。
高金利の通貨の買いポジションを持った場合(=低金利通貨の売りポジション)、スワップポイントを受け取ることができ、逆に高金利の通貨の売りポジションを持った場合(=低金利通貨の買いポジション)、スワップポイントを支払う必要があります。東京金融取引所「スワップポイント」
ここまでは教科書どおりだ。問題は、この「受け取る」と「支払う」が鏡像になっていない点にある。
ズレその一。受取と支払は同額とは限らない
東京金融取引所は、自らの商品を説明するページで、店頭FXの実務にはっきり言及している。
店頭FXでは、スワップポイントの受取額より支払額を大きく設定している場合があります。一方、くりっく365では、東京金融取引所も取引参加者もスワップポイントから支払額と受取額の差益を得ない仕組みを採用し、受取額と支払額を同額(一本値)に設定しています。東京金融取引所「特徴とメリット」
同じページの注記は、この一文が優劣の宣言でないことも断っている。「くりっく365」のスワップポイントについては、全ての店頭FXと比較し、常に受取額が多い、または支払額が少ないということではありません――取引所側が自分でこう書いている。一本値とは「常に得」という意味ではなく、買いと売りで数字が割れないという意味だ。
実際、取引所が日々公開する相場表には、スワップポイントの欄が1つしかない。2026年9月2日の米ドル・円は486、ユーロ・円は280。買い用と売り用に分かれた数字は存在しない。一方の店頭FXは会社ごとに受取と支払を設定する。同じ通貨ペアを同じ日に持っていても、買いと売りで額が一致しないことがありうる。自分の口座の建玉一覧を開き、買いスワップと売りスワップが並記されているなら、その差額分は自分が負担している。
ズレその二。日数は0日から4日まで振れる
「1日分」という前提が、そもそも成り立たない日がある。東京金融取引所は取引日ごとの日数を取引日・スワップポイントカレンダーで公表している。同取引所のFAQにも「スワップポイント日数」が普段より多かったり、0であったりする日があるのですが?という項目が立っている。米ドル・円の2026年8月末から9月上旬を並べる。
| 取引日 | 決済日 | スワップポイント日数 | 相場表のスワップポイント欄 |
|---|---|---|---|
| 8月27日(木) | ― | ― | 133 |
| 8月28日(金) | 9月1日 | 1 | 127 |
| 8月31日(月) | 9月2日 | 1 | 125 |
| 9月1日(火) | 9月3日 | 1 | 125 |
| 9月2日(水) | 9月4日 | 4 | 486 |
| 9月3日(木) | 9月8日 | 0 | ― |
| 9月9日(水) | 9月11日 | 3 | ― |
9月2日の486を前日の125で割ると3.89倍になる。カレンダーの「4日分」と、相場表の実数が噛み合っている。同じ日を他の通貨ペアで見ても同じ跳ね方をしていた。
米ドル・円 486 ÷ 125 = 3.89/ユーロ・円 280 ÷ 73 = 3.84
英ポンド・円 669 ÷ 173 = 3.87/メキシコペソ・円 491 ÷ 127 = 3.87
南アランド・円 521 ÷ 137 = 3.80/トルコリラ・円 102 ÷ 25 = 4.08
なぜ4日分になり、翌日が0日分になるのか。決済日が9月4日から9月8日へ4日ぶん飛んでいるからだ。スワップは暦の日数ではなく、決済日の間隔で決まる。取引所は「スワップポイント日数は、インターバンク(銀行間市場)の決済日をベースに東京金融取引所の定めたカレンダーに基づいて決定される」と説明している。3日分がつく水曜日だけを覚えている者は、この4日と0日の組を知らない。
同じ日でも、通貨ペアによって割れる
ここからが本題だ。2026年8月28日、米ドル・円のスワップポイント欄は127だった。同じ日の英ポンド・円は0.000である。
理由は決済日の側にある。8月31日が英国の休業日にあたり、ポンドの決済日がずれた。その日は何日分、という言い方が、そもそも通貨ペアをまたいで成立しない。複数の通貨ペアを持っている者は、ペアごとにカレンダーを見よ。
ズレその三。符号が反転する
受け取る側が常に受け取れるとも限らない。同じ2026年9月2日、スイスフラン・円のスワップポイント欄はマイナス216だった。8月27日はマイナス57、8月28日はマイナス51、8月31日はマイナス54、9月1日はマイナス53。符号が5営業日ずっとマイナスで、4日分の日にきちんと4倍のマイナスになっている。
これは事故ではない。金利差の向きが変われば符号も変わる。東京金融取引所は、金利差すら反映しない場合があることまで書いている。
但し、取引対象の通貨によっては、銀行間外国為替市場における需給や相場観の影響を受け、金利差を反映せずに、スワップポイントの増減や受払いの逆転が生じたり、場合によっては高金利通貨の買いポジションで支払いが生じる可能性があります。東京金融取引所「スワップポイント」
高金利通貨を買えば受け取れるという理解は、条件つきの命題でしかない。買った瞬間に固定される利回りではない。
受取額そのものが年ごとに動く
東京金融取引所は、南アランド・円について1枚あたりのスワップポイントの月別実績を公表している。年ごとの合計を並べる。
| 年 | 1枚あたりのスワップポイント合計 | 1枚の取引想定元本 | 元本に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 2024年(12か月) | 64,104 | 833,000円(2024年12月31日時点) | 7.70% |
| 2025年(12か月) | 51,634 | 946,500円(2025年12月31日時点) | 5.46% |
| 2026年1〜8月 | 34,706 | 991,000円(2026年8月31日時点) | 3.50% |
2024年から2025年にかけて、合計は64,104から51,634へ約19%減っている。同じ通貨ペア、同じ1枚での話だ。金利は動く。だからスワップ狙いの想定利回りは、建てた日の数字で固定できない。
スワップは維持率にも税にも効く
受け取ったスワップは口座のどこに乗るのか。金融先物取引業協会は、証拠金維持率の分子である実預託額の説明で、はっきり書いている。
評価益又は評価損には、スワップポイント(通貨間の金利差調整額)の評価益又は評価損を含みます。一般社団法人 金融先物取引業協会「個人顧客を相手方とするFX取引に係る証拠金規制」
つまり払う側に回った建玉は、含み損とは別に維持率をじわじわ削る。維持率の計算そのものは証拠金維持率の実計算で扱った。
税の扱いも押さえておけ。東京金融取引所はくりっく365について、課税対象になるのは「建玉を転売買戻しした際に確定した為替差益及びスワップポイント」だと説明している。そのうえで「転売買戻しを行う前の評価益(計算上の利益)の段階では、課税対象にはなりません」と続けている。国税庁のタックスアンサーNo.1521も、課税されるのは差金等決済により生じた損益だと書いている。受取スワップの反映は会社ごとに違う。自分の口座がどの時点を確定として扱うかを確かめよ。詳しくはFXの税金と確定申告の基礎で扱っている。
金利差を決めるのは相場だが、受払の幅を決めるのは会社である。決められる側に立っていることを、忘れるな。
道場の心得:スワップは利回りでなく変数である
三つに凝縮して叩き込む。
- 受払が同額かどうかを、自分の口座で確かめよ。買いスワップと売りスワップが別々に表示されているなら、その差は自分が負っている。
- 日数のカレンダーを通貨ペアごとに見よ。米ドル・円は2026年9月2日が4日分、9月3日が0日分。8月28日は英ポンド系5ペアだけが0だった。
- 受取額は年ごとに変わる。南アランド・円の1枚あたり合計は2024年が64,104、2025年が51,634。建てた日の数字で将来を固定するな。
よくある問い
- スワップポイントの受取額と支払額は同じか。
取引所FXと店頭FXで扱いが違う。東京金融取引所は「店頭FXでは、スワップポイントの受取額より支払額を大きく設定している場合があります」と書いている。そのうえで、くりっく365については「受取額と支払額を同額(一本値)に設定しています」と説明している。ただし同じページの注記は「常に受取額が多い、または支払額が少ないということではありません」とも断っている。
- スワップポイントは毎日つくのか。
つかない日がある。東京金融取引所のカレンダーでは、米ドル・円の2026年9月2日が4日分、翌9月3日が0日分と示されている。同取引所の相場表でも、米ドル・円のスワップポイント欄は9月1日が125、9月2日が486だった。
- 高金利通貨を買えば必ず受け取れるのか。
限らない。東京金融取引所は「金利差を反映せずに、スワップポイントの増減や受払いの逆転が生じたり、場合によっては高金利通貨の買いポジションで支払いが生じる可能性があります」と明記している。
- スワップポイントは証拠金維持率に影響するか。
する。金融先物取引業協会は、維持率の分子にあたる実預託額について「評価益又は評価損には、スワップポイント(通貨間の金利差調整額)の評価益又は評価損を含みます」と説明している。
まずは今週のスワップポイント日数を、自分が持っている通貨ペアのぶんだけ調べよ。次に、自分の口座の建玉一覧で買いと売りのスワップが同額かを見る。この二つが分かれば、口座に入る数字の理由が説明できる。今日の稽古は、そこから始めよ。